RSウイルスとは?
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RSウイルス感染症とは?
RSウイルスより引き起こされる呼吸器感染症のことをRSウイルス感染症といいます。
RSウイルスは世界中に分布しており、乳幼児から大人まで誰もが感染するウイルスです。ただし、一度かかると、二度と感染しないということではなく、何度も感染をくり返します1)。
RSウイルスに感染すると、4~5日の潜伏(せんぷく)期間(症状のない期間)を経て、発熱、せき、鼻水などの上気道炎の症状がみられるようになります。
上気道炎の症状が数日続いた後に快方に向かう場合が多いですが、その後にRSウイルスが下気道(気管や気管支など)に感染することで、強いせきや、ゼーゼー、ヒューヒューといった喘鳴(ぜんめい)、呼吸困難により顔色が青白い、唇の色が青紫色になるなどの下気道炎の症状がみられる場合があります(図1)2)。
RSウイルスの表面にあるGタンパク質は人の細胞との接着に関与します。Fタンパク質は人の細胞への侵入に関与します。
乳幼児では、2歳になるまでにほぼ100%がRSウイルスに感染するといわれていますが、初めて感染したときは重症化し、入院に至ることがあります。 また、これまでの研究により、早産児、肺や心臓に基礎疾患などがある乳幼児では、RSウイルスに感染すると重症化しやすい(リスク因子といいます)ことが知られています3)。
重症化のリスク因子のある乳幼児では、感染により細気管支炎や肺炎などの下気道炎などを引き起こす場合があります。その結果、呼吸困難がみられ、入院、呼吸管理が必要になります4)。そのため、国内ではこのような重症化のリスク因子のある乳幼児に対しては、RSウイルスの流行期間中に、RSウイルス感染による重症化を抑えるお薬※を使用できるようになっています3)。
近年、RSウイルスに感染した2歳未満の新生児・乳幼児を対象とした近年の研究結果によると、RSウイルスに感染した2歳未満の乳幼児のうち、25%が入院していたことがわかりました。それらの入院した乳幼児の特徴を調べたところ、以下のことが示されました。
- ・入院した新生児・乳幼児の約90%では、重症化のリスク因子がありませんでした(図2)。
- ・入院した2歳未満の新生児・乳幼児の月齢分布は、6ヵ月未満の割合が約40%を占めていました(図3)。
- ・入院時に人工呼吸器を使用した2歳未満の新生児・乳幼児の約半数は6ヵ月未満でした。
以上のことから、2歳未満の新生児・乳幼児では、重症化のリスク因子がなくても、RSウイルスに感染することにより、重症化する可能性があるため注意が必要と考えられます3)。
参考)
- 1)国立感染症研究所: 病原微生物検出情報35(6): 137, 2014
- 2)堤裕幸: ウイルス 55(1); 77, 2005
- 3)Kobayashi Y et al.: Pediatr Int 64(1): e14957, 2022
- 4)厚生労働省: 感染症に基づく医師の届け出のお願い-RSウイルス感染症(https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01-05-15.html)(2023年12月28日時点)
- 5)Hu M et al.: Physiol Rev 100(4): 1527, 2020